体外受精の一般的な流れ。

体外受精の一般的な流れ。

ここから説明する体外受精のプロセスは、最もスタンダードなものといえるのですが、その具体的な技術や方法は、医療機関によってさまざまだというのが現実であり、そうしたバリエーションについては、あとで詳しく述べてみたいと思します。

体外受精では、なるべく多くの卵子を得るという目的のために、排卵誘発剤を用いた卵巣の刺激をおこないます。

そして、卵胞の大きさから卵子が成熟したと思われる段階で、いっせいに卵子の収穫すなわち採卵をおこないます。

同時に、男性から提供された精液は,洗浄、濃縮され、調整精子として準備されます。

受精は、シャーレの中で一定濃度に調整された精子を卵子にふりかけることによっておこないます。

卵子が無事受精し、受精卵となったかどうかは、その翌日、一このシャーレの中の卵子を顕微鏡で観察することによって、確かめることができます。

受精卵はさらに培養を進めます。

順調に行けば分割という現象が始まります。

4ないし8分割が確認されたグレード(42ページ参照)の高い分割卵=胚を女性の子宮の中に戻します。

これがすなわち胚移植です。

胚移植のあと、より妊娠を成立しやすくするために黄体ホルモン製剤の補充をおこなうというのが一般的で順調に経過すれば、胚移植から2週間前後で妊娠の反応を確認することができます。

それでは次項から,それぞれのプロセスについてより詳しく見ていくことにしましょう。

IVFLesson・体外受精のプロセスは5段階。

※体外受精の流れ.その1ー排卵誘発。

排卵誘発のスタンダードはロング法。

排卵誘発剤は不妊治療においてタイミング法や、人工授精の際にもしばしば利用されます。

しかし、そうした際に排卵誘発剤を用いる目的は、排卵をより確実にする、あるいは黄体機能を改善させるということです。

しかし、体外受精の際に排卵誘発剤を用いる理由は、なるべく多くの卵子を成熟させるということです。

なるべく多くの卵子を成熟させるということは、裏を返せば、多くの卵子がないことには妊娠の確率が低いということでもあるのです。

体外受精での排卵誘発の方法は、ここ数年、医療機関によって非常にバリエーションが多くなってきました。

ここでは、最もスタンダードな方法として広くおこなわれている「ロング法」について述べてみます。

ロング法で最初に用いられる薬は、GnRHアゴニスト(製品名:スプレキユア,ナサニールなど)という点鼻薬です。

この薬は、脳の下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)といった、卵胞を刺激し、排卵をうながすホルモンの分泌を抑えます。

まず,GnRHアゴニストを継続して使い続けることで,脳下垂体からのホルモン分泌を抑制し、LHサージと呼ばれる排卵の引き金になる現象を消失させます。

すなわち、ロング法においてGnRHアゴニストを用いるのは、女性の卵巣機能を一時的にフリーズさせて、白紙のような状態にするということです。

そうして、自然な卵巣の機能を抑えた上で、今度はhMGという注射を毎日おこない人為的に卵胞を成熟させます。

これによって、通常複数の卵胞が成長してきます。

それと並行して経腟超音波法で入念に卵胞を観察し、卵子が十分に成熟したと考えられるタイミングで、自然周期のLHサージのかわりにhCGという注射をおこなつて、排卵誘発をします。

それから36時間前後に採卵するというスケジュールになります。

この卵巣刺激法がロング法と呼ばれるのは、GnRHアゴニストを生理開始前から採卵の直前まで、長期間使用するためです。

しかし、女性の年齢が高齢である場合、卵巣機能が低下していることも考えられます。

こうした場合、ロング法ではなく、GnRHアゴニストの使用期間を短くする「ショート法」と呼ばれる方法がおこなわれることもあります。

ピン)性腺刺激ホルモン卵胞を成熟させるための注射薬,FS性腺刺激ホ人工的にLHサージをつくり、排卵をうながしたり、黄体刺激をす※GnRHアゴニストのフレアアップ現象を利用したショート法。

ところで、GnRHアゴニストにはちょっと変わった特徴があります。

それは、使い始めの数日間は,一時的にFSHやLHの分泌が高まり,排卵しやすくなるのです。

これをフレアアップ現象といいます。

この性質を利用し、排卵誘発作用を期待してGnRHアゴニストを使うわけです。

この方法の場合、GnRHアゴニストは生理が始まってから使用されるため、ロング法に比べて使用期間が短くなります。

そのため、ロング法に対してショート法と呼ばれます。

しかし、排卵誘発の方法は単純にロング、ショートと二分されるわけではもちろんなく、女性の年齢、卵胞の発育速度など、さまざまなバックグラウンドに応じて、ケースバイケースで薬が使用されることが多いのです。

さらに最近になってhMG、hCG製剤の問題点が指摘されるようになり、体外受精における排卵誘発の方法は、混沌としてきている状況にあります。

*実際に治療が始まってから感じたのは、採卵や子宮内膜をつくるためとはいえ、からだの自然なリズムを薬で人工的に変えてしまうことに対して違和感を覚えてはいられなかったということです。

あまりにも素直に体が薬に反応することへの、驚きや恐怖といったものだったように思います。

さらに、最近注目を集めているのが、GnRHアゴニストに変わってGnRHアンタゴニスト(製品名:セトロタイド)を用いる方法で、この薬を使用する医療機関も増えてきました。

しかしながらこの薬剤は、現在のところ日サイトでは未認可なので,医師がその責任において個人的に入手し、使用しているケースが多いようですGnRHアンタゴニストは、フレアアップ現象を起こさず、hMG投与の期間がGnRHアゴニスト使った場合より短くなるため、ショート法とロング法の両方の利点をとった方法ということもできます。

この薬が正式に認可されれば、体外受精における卵巣刺激の主流になっていくかもしれません。

今はまだ、ベジママのような市販サプリで対策を講じる方が大勢ですが、医薬品への信頼が上がっていくのではないかと思います。

いっぽうで、こうした排卵誘発法の流れに対抗するように、まったく排卵誘発剤を使用しない自然周期での採卵や、タイミング法などで使用するクロミフェン(製品名:クロミッド、フェミロン、セロフェンなど)という排卵誘発作用の弱い薬剤を用いて採卵をおこなうという医療機関も少しずつですが増えてきました。

自然周期においては通常1個、クロミフェンを用いたときの周期(クロミフェン周期)においても2個もしくは3個しか採卵することはできません。

一定の妊娠率を確保するなかで、より肉体的な負担が少ない方法を選択できるかどうかも、その医療機関の実力だといえますが,こうした方法を採用する医療機関は、自らがとてもレベルの高い医療システム並びに医療技術を持っていると考えているわけで,こうした方法こそが今後の主流になるべきだと主張します。

この点においては、hCG、hMG問題と合わせて、後述したいと思います。

ちなみに、世界で最初の体外受精児ルイーズ·ブラウンさんが誕生したときの採卵は、自然周期での腹腔鏡によるものでした。

IVFLessons・排卵誘発は、ロング法,ショート法だけではない。